womans eyes seen in car rear view mirror

自然に運転ができるようにはなりません―子育ても同じです

子育て支援や、子育てに関する教育について、政府が個人のプライバシーに関わろうとしている、という意見を時々耳にします。子どもがみんな同じ食事をとるように強制される社会になりつつあるかのようなコメントです。

でも、子育てについて(そして、人とのコミュニケーションや、強い感情に対応する基礎について)人々に教えることを、ドライバー教育と同じ視点で見ると、どうなるでしょう?

運転に必要とされる経験や教育を受けていない人が運転してもよい、という人はさすがにいないでしょう。また、ハンドルのきり方やペダルの踏み方を知っているだけでは、いい運転ができないこともわかるでしょう。「でも、運転の教習を受けると、みんなが同じ場所に向かって運転するようになりませんか?」そんなことはありませんよね。

将来に備える

特に若いドライバーにアドバイスや練習の機会を与えることは、道路上の安全を向上させる一つの方法です。例えば、若者が運転席に座る前に、交通ルールについて学ぶ、スピードの出し過ぎや飲酒運転の危険を広く知らせる、ドライバー教育の推進、正確にはこれから運転する人たちへの教育の推進、などが考えられます。

すべてのドライバー(特に免許を取り立てのドライバー)に、より安全に、より多くの知識を持って運転してもらうというアイデアです。これは、道路を利用する他の人々にもよいことです。このようなドライバー教育のメリットは、道路上の危険が顕著に減ったことからもわかります―例えば、年間事故による死者の数を1970年(16,765名)と最近のデータ(2012年は4,411名)とを比べてみるとわかります。

よりよいドライバーであることによる私たち自身へのメリット、そして、経済的、社会的なメリットを考慮することも大切です。

運転に関する教育と、子育てや人間関係に関する支援やトレーニングと、どんな関係があるのでしょう?子育てや効果的なコミュニケーションは、教えればできるようになるというわけではない、という時代もありました―運転でも言えることですが、経験からしか学べないこともあるのは事実です。

ですが、数十年間の研究の結果、健全な人間関係と子どもの発達のためには何が必要なのか、その基本的な知識と共に、エビデンスに基づいた子育てや、人間関係のスキルや方法も学んで身につけることができる、ということがわかってきました。このような知識を、教えてもらうことなく自然に身につけることを期待してもよいのでしょうか?

子育てのコースというと、虐待やネグレクトが起こっている家庭に、このようなコースを必修とするにはどうすればよいか、に関する話題がメディアでよく挙がります。このアプローチをドライバー教育に用いたらどうなるでしょう!運転に関する教育が「必要な」人々だけが受ければよい、ということにしたら、どうなるでしょう?そのような教育が必要な人は誰か、どうやって見つけるのでしょう?その人が持っている「リスク」と思われる要素をベースに決めるのでしょうか?

魔法の鏡でもない限り、このアプローチはうまくいきません。かえって運転講習の評判が悪くなってしまうでしょう。このようなアプローチでは、ドライバーの態度や行動の変化を広く期待することは出来ません。

理にかなっています(経済的にも)

反対に、年齢に関係なく、すべてのドライバーに広く交通安全のメッセージを届けながら、新しいドライバーにも指導することを目的にすることで、顕著な効果が出ています。子どもの成長の一部として、親は喜んで子どもに運転教習を受けることを促し、その費用を払うことでしょう。飲酒運転は、今では社会的に受け入れられず、飲酒運転による死亡や傷害は、1980年代以降大きく減少しました。社会にもメリットがあり、政府や企業がドライバー教育に資金を使うことの経済的なメリットが認識されています。

では、このアプローチを、子育てや人間関係(人間関係のスキル)の教育にあてはめてみましょう。このようなアプローチが、犯罪、人間関係の破たん、家庭内暴力、子ども虐待やネグレクト、精神的そして身体的な健康問題を顕著に減少させることで、現在使われているコストの最大7倍も節約できる、というような研究が増えています。  

でも、ドライバー講習と同様、悪い影響を減らすことだけがメリットではありません。乳幼児期の子どもの発達と神経科学について、さらに学び、子育てや人間関係についての知識やスキルを向上させることで、そして子どもの学術的な成果を社会全体で向上させることが出来ることに気づくほど、身体的・精神的な健康の向上と、より生産的な労働力につながるのです。

交通安全のキャンペーンは、短期間で多くの成果をもたらしました。統合されたユニバーサルなアプローチがもたらすことが出来る成果の、素晴らしい一例です。ですから、このアプローチに真剣に取り組みましょう。これは、政党内の政策論や理想論の言い争いを超えたアプローチです。効果的な子育てや人間関係に、安全運転と同じようなフォーカスを持った公共政策を作る方々が支持されるべきです。将来よい効果がもたらされることは間違いないからです。