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スタンプチャートについて少しだけ知っていることが全く知らないことよりも害になる時があります

最近は、「迷信の解明」のような用語がよく使われるようになりましたが、それには妥当な理由があります。間違った情報に満ちた本、ウェブサイトが巷に行きかっているからです。

例えば、チャールズ・ダーウィンは「適者生存」というフレーズを一度も使わなかったことをご存知ですか?事実、ダーウィン、そして他の学者たちは協同・協力の重要性を強調しています。アルバート・アインシュタインも、狂気の定義は同じことを何度も繰り返して異なる結果を求めることだ、と言ったことはありません。マリー・アントワネットも、「(市民には)ケーキを食べさせればよい」と言ったことはありませんでした。(詳しくはこちらをご覧ください)

ですから、「ご褒美チャート」「行動チャート」または単にスタンプチャートなど、色々な名前で呼ばれているチャートにもたくさんの誤解があることは驚くことではありません。

「スタンプチャートの危険」と題されたThe Atlantic誌の記事は、出版時に大変注目されました。ある物事を支える主要な原則を理解しないで、大まかな点だけ拾い上げると問題が起こり得ることを、この記事は正確に明示しています。(理解不足が問題であることがこの記事では明確にされなかったことが残念です。その結果、「スタンプチャートはよくない」というアイデアをこの記事から持ってしまうこともあるでしょう)

それでは、この問題についてもう少し紐解いてみましょう。

先ほどの記事でも説明されていたように、スタンプチャートが不適切に使われると、期待していたものと正反対の結果が起こりかねません。特定のスキルや行動を子どもに促す代わりに、子どもが生来持っている協力する傾向(上記のダーウィンンについての文献参照)を「ほうびがある時だけ協力したり親切にしたりすればよい」という考えに置き換えてしまう可能性もあります。

記事には、他人との関わりを経済的な取引のようにとらえるようになった子どもたちのことが例として挙げられています―「僕に片づけの手伝いをしてほしいの?見返りにほうびがもらえるんだったらやるよ。ほうびないの?そっか、じゃあ手伝いたくない」

問題がわかりますよね!でも大切なことは、スタンプチャート自体が悪いわけではない、ということです。

以下のようなことを理解せずにチャートを使うのが理由で問題が起こるのです:

  • チャートを使用するのがよい状況、使用しない方がよい状況はどんな状況か
  • チャート以外に親がする必要のあることは何か
  • どんなほうびが適切(または不適切)か
  • いつ、どのようにしてチャートを徐々に減らしていけばよいのか

例えば、このようなチャートは子どもが新しい行動(「お願いします」「ありがとう」と言う、など)や新しいスキル(布団やベッドを整える、歯を磨くなど)を身につけるための手助けとしてのみ使われるべきです。短期的に使われるもので、単一の手法として使うのではなく、他の子育て手法を補助するために使われるものです。さらに、このようなチャートを適切に使う親は、子どもが新しいスキルや行動を身につけていくにつれて、ほうびをもらうタイミングを徐々に予測しにくくしていき、最終的にチャートの使用を徐々に減らしていきます。

このようにチャートを使うことで、子どもが「ねえ、ごほうびは?」と考えるメンタリティーを身につけにくくします。エビデンスに基づいた子育てプログラムを受けて必要なスキルや情報を手に入れるほうが、記事を1つか2つ読むだけよりも望ましいことが、これまでの話でよく表されています。

ルールを作る、クワイエットタイム、タイムアウト、子どもをほめるなど、Triple Pの他の手法と同じように、スタンプチャートについても、どんな手法なのか、どのように使えばよいのか、そして使う目的について、情報を聞きかじっただけの人は間違ったアイデアを簡単に持ってしまうでしょう。

しかし、他の前向きな子育て手法と併せて効果的に使うことで、エビデンスに基づいた手法のそれぞれが、より強固な親子関係を築くこと、協力、親切心、そしてチームワークのメリットを子どもに理解させること、子ども自身の自己調整や自己啓発を育むこと、などのために効果を発揮するのです。