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世界的な子育ての専門家によるレジリエンスのトレーニングを災害を受けた地域の家庭に届ける

昨年3月のサイクロンによって被害を受けた、マッカイとウィットサンデーズ地区の子どもやティーンエージャーの約10%が深刻な災害後のトラウマを継続して経験していると言われています。  

オーストラリアのメンタルヘルス災害対応に関するこれまでのデータによると、さらに20%の若年層の住民が中程度の心理的な症状を経験したであろうと推測されています。

Triple P創始者のマット・サンダース教授は今週、マッカイ、プロサパイン、キャノンベール地区で、地元の保護者の皆さんに「困難な状況に適応できる子どもを育てる」というセミナーを行いました。多くの子どもが災害から立ち直る手助けとして、前向きな子育てスタイルが重要な要素であることが研究で示されている、とサンダース教授は言います¹。 

「子どもは、様々な状況や問題にどう反応すればよいのか判断するときに、大人の反応を参考にします。ですから、親がストレスの高い状況で前向きに対応する態度を示すことで、子どもにレジリエンスの手本を示すことになるのです。行動に関して、大変力強い先生のような存在になるのです」とサンダース教授は言います。 

サンダース教授のセミナーでは、親自身が感情的なレジリエンスや適応技術を築くのに役立つ、エビデンスに基づいたヒントや手法が紹介されました。このようなヒントや手法を実践することで、親が人生に対する前向きなアプローチを子どもに手本として見せることができるのです。

参加した親は、感情を適切に表現すること、前向きに考えること、困難な状況に適応する効果的な方法を身につけること、ネガティブな感情に対応すること、ストレスの高い出来事に対処すること、自分の感情に気づき受け止めること、などを子どもに教える方法を学びました。

避けたほうがいい「罠」

子どもが自然災害の後にメンタルヘルスの問題に陥る可能性を高める可能性のある親や家族の行動がある、ということがTriple Pの研究で示されています。 

「子どもにとってトラウマとなるようなことが起こった時に、避けたほうがいいことがいくつかあります。例えば、その出来事についてのメディア報道を制限なく見せたり、起こったことについて話しすぎたり、また極度に話すことを控えたりすることが挙げられます」とサンダース教授は言います。 

「どのような困難なことが子どものこれからの人生に起こるとしても、親としてできることは、子どもをサポートするために、そしてストレスの多い様々な状況に対応できるように子どものレジリエンスを築くための最善の方法について情報を得ることです。」

地区の多くの人々が、昨年のサイクロンの後に元の生活状態に戻れていない、とマッカイ市のジョージストリート・ネイバーフッドセンターの地域復興チームに勤めるトニー・マリー・ストレンジさんは語ります。

「私たちのチームは、災害復興支援を提供する他の団体と一緒に、今でも毎週経済的な支援や心理的なサポートを提供しています」とストレンジさんは言います。 

「洪水やサイクロンの被害を受けた多くの家庭が自分たちの家に戻っています。ですが、修理費などの請求書が思いがけず届いたり、家族関係に今まで以上にストレスを経験したり、家庭生活が習慣通りに動かなかったり、また、心理的に影響を受けた子どもたちがいたりと、まだ私たちの支援が必要とされています」

 

 ¹Cobham, V.E., McDermott, B., Haslam, D., & Sanders, M.R. (2016). The role of parents, parenting and the family environment in children’s post-disaster mental health. Current Psychiatry Reports, 18(6), 53- 62. doi: 10.1007/s11920-016-0691-4